「忙しいのに、なぜ旅ができるんですか?」とよく聞かれる。答えを一言で言うなら「忙しいからこそ、仕組みを作るしかなかった」だ。経営者として毎日のタスクをこなしながら、海外出張・現地視察・そして個人の旅を続けていくために、私なりのタイムマネジメント術が生まれた。それをできるだけ具体的に共有してみる。
「時間の使い方」が経営者の唯一の差別化要素
スタートアップのCEOには「やらなければならないこと」が無限に降ってくる。営業、採用、資金調達、製品開発、投資家対応、チームマネジメント——全部一人で抱えようとしたら、文字通り24時間では足りない。
だから最初にやったのは「自分にしかできないこと」と「他の人でもできること」の仕分けだ。意思決定・対外交渉・ビジョン策定は自分がやる。オペレーション・定型業務・リサーチは仕組み化してチームや外注に任せる。この原則を徹底することで、自分が使う時間の質が劇的に上がった。
1日のスケジュール設計:「集中タイム」を死守する
私の1日は「午前中を最重要タスク専用」にするところから始まる。メール・Slack・SNSを確認するのは昼以降にする、という単純なルールだが、効果は大きい。人間の集中力が最も高いのは起床後の2〜3時間と言われており、その時間に最難易度の仕事(戦略立案・提案書作成・商談準備)を入れる。
打ち合わせはなるべく午後に集中させ、移動時間はPodcast・音声インプット・Slack返信に当てる。「スキマ時間を何に使うか」を事前に決めておくことで、1日の情報インプット量が大幅に増える。
週次レビューも欠かさない。毎週日曜夜に「今週やったこと」「来週やること」「削るべきタスク」を30分で棚卸しする。これをやっていない時期は、「なんか忙しいけど前に進んでいない」という感覚が続いた。
なぜ旅を続けるのか:モチベーションの源泉
旅は「休息」ではなく「インプット」だ——私にとっては。現地を歩き、現地の人と話し、現地のビジネスを観察することは、どんなリサーチレポートよりも解像度の高い情報をもたらしてくれる。中国の工場街を実際に歩いてみて初めて気づいたことは、オフィスでREDをスクロールしていても絶対にわからないことばかりだった。
また、旅は自分の「スケール感」を維持するためにも必要だと感じている。日本の中だけで仕事をしていると、気づかないうちに視野が狭まる。「世界にはこんな市場がある」「こんな働き方をしている人がいる」という感覚を定期的にリセットしないと、意思決定が保守的になる。
「海外インターン」という選択:多様性がチームを強くする
現在Qeightでは海外からのインターン生を積極的に採用している。売上の約2割をインターン費用に充てるという方針を持っており、これは単なるコスト削減策ではない。多国籍なメンバーが持つ視点の多様性が、製品開発・市場分析・営業アプローチに新しいアングルをもたらしてくれるからだ。
特に中国語ネイティブのインターン生は、REDのリサーチや中国サプライヤーとのコミュニケーションで圧倒的な力を発揮してくれる。私自身が世界一周で「多様な価値観に触れる重要性」を体感しているからこそ、組織にその多様性を意図的に作ろうとしている。
モチベーションが落ちたときの立て直し方
当然、モチベーションが落ちることはある。商談が立て続けに失注した週、チームメンバーとの方向性がずれた時期、資金繰りが厳しいと感じる瞬間——そういうときに効くのは「なぜ始めたかに戻る」ことだ。私の場合、それは世界一周で見た「夢はあるのに行動できない人たち」の顔だ。その人たちを支援できる仕組みを作るという原点に戻ると、目の前の課題は「解決すべき課題」に見え方が変わる。


「激務と旅」を両立するための時間設計
経営者のカレンダーは「放置すると会議で埋まる」という特性がある。これを防ぐために、私は週初めに「Deep Work時間(思考・創造・戦略)」を必ずブロックする習慣をつけている。この時間はよほどのことがない限り動かさない。
旅や出張を組み合わせることで、逆に集中力が上がるという逆説がある。移動中・滞在先では「緊急でない重要なこと」——新事業の構想・長期計画の見直し——に時間を使いやすい。日常のオフィスでは「緊急だが重要でないこと」に時間を奪われやすいが、旅先ではその割り込みが物理的に減る。
モチベーションの源泉——「外発的」から「内発的」へのシフト
創業初期は「稼がなければ」というプレッシャーがモチベーションを作っていた。しかし3年目になると、そのプレッシャーは徐々に「使命感」に変わってきた。「製造業の現場をもっと良くしたい」「自分にしか作れないものを世界に出したい」という内発的な動機が、長期的なモチベーションの安定につながっている。
まとめ:「やりたいこと全部やる」は仕組みで実現できる
20代で経営者をやりながら旅を続けることは、「特別な才能」ではなく「仕組みと優先順位の設計」でできることだと思っている。全部自分でやろうとしない、集中時間を守る、定期的に視野をリセットする——このシンプルな原則を実践するだけで、働き方は大きく変わる。読んでくれているあなたも、「やりたいこと」に向かって動き始める理由は十分あるはずだ。


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