「日本で売れているものがアジアでも売れる」——この思い込みがいかに危険か、実際に動いて初めて痛感した。台湾・ベトナムへのアプローチを始めた当初、私たちが犯したミスは「日本向けのプレゼンをそのまま持ち込む」という単純な過ちだった。
台湾市場:日本との近さと思わぬ落とし穴
台湾は日本文化への親近感が強く、日本語が通じる場面も多い。だからこそ「日本と同じように進めていい」という油断が生まれやすい。しかし台湾の製造業は独自の強固なサプライチェーンを持ち、外部ベンダーへの切り替えには相当な信頼構築が必要だ。特に中堅・中小企業では、担当者個人との関係性が意思決定を動かすケースが多く、「何度も会いに来る」「食事を共にする」という関係構築コストを軽視すると商談は絶対に進まない。
COMPUTEX(台北国際コンピュータ展)への出展を通じて気づいたのは、台湾バイヤーは「技術のデモ」より「導入後のサポート体制」を重視するという点だ。「問題が起きたとき、どれだけ速く・どれだけ丁寧に対応してくれるか」が信頼の核心にある。
ベトナム市場:成長速度と人材の質の驚き
ベトナムは「アジアのものづくり新興国」として製造業の移転先として注目されているが、現地を訪れると単なる安い工場の集積地ではないことがわかる。ハノイ・ホーチミンのITエンジニアの技術レベルは高く、英語力もある。スタートアップエコシステムも急速に育っており、現地の若い起業家たちのスピード感と学習意欲は刺激的だ。
ただし商習慣の違いは台湾より大きい。契約書・仕様書の解釈が日本と異なるケースがあり、「言った・言わない」の問題を防ぐための書面管理が重要になる。現地パートナー(ローカルエージェント)の質が事業の成否を大きく左右するため、最初のパートナー選びには時間と労力をかけるべきだ。
ローカライズで外してはいけない3つのポイント
①価格表現の現地化:日本の価格をそのまま現地通貨に換算するだけでは「高すぎる」と判断されることが多い。現地の賃金水準・競合製品の価格帯を調査し、ローカルプライシングを別途設定する必要がある。②サポート言語の用意:英語対応だけでは不十分で、台湾なら繁体字中国語、ベトナムならベトナム語のドキュメントを揃えることが信頼につながる。③現地の成功事例の作成:「日本での導入実績」よりも「この国のこの会社での成果」のほうが説得力が段違いに高い。最初の1社に本腰を入れて成功事例を作ることが、2社目以降の獲得を劇的に加速する。
台湾進出で直面した「思っていたより遠い文化的距離」
台湾は日本人にとって「親しみやすいアジア」として知られる。しかし実際に台湾市場でサービスを展開しようとして最初にぶつかったのは「意思決定スピードの違い」だった。「再考一下(もう少し考えます)」の言葉の重みと意味は会社・担当者によってまったく異なり、信頼関係を作るまでに日本よりずっと多くの「顔を合わせる時間」が必要だった。
ローカライズで絶対に省いてはいけない3つのこと
①決済手段の現地化:日本のクレジットカード前提のシステムはそのままでは機能しない。現地の主要決済手段(台湾ならLINE Pay、ベトナムならMoMo・ZaloPay)への対応が必須だ。
②サポート言語の現地化:英語対応だけでは中小・中堅企業との取引は難しい。現地語でのサポート体制(最低でもFAQ)がないと、クレームが泥沼化する。
③価格感の現地化:日本円換算で「安い」価格設定が、現地の所得水準では高価に見えることがある。現地の競合製品・サービスの価格帯を徹底的に調べてから価格を設定すること。
まとめ:海外展開は「自社の仮説の検証」から始まる
海外展開で最初にやるべきことは「現地を知る」だ。展示会への出展・現地エージェントとの面談・現地スタートアップとの情報交換——まず動いて自社の仮説を検証し、修正する。日本での成功体験を捨てる勇気と、現地に学ぶ謙虚さが海外展開を成功させる最大の条件だと実感している。


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